店舗開業の手順 コンセプト固め~開店まで
店舗コンセプト固め~事業計画書作成
【店舗コンセプトの確立について】
まずは「店舗コンセプト」を固めるところから始まります。店舗コンセプトとは、今後経営していく店舗の方向性を確立する最も重要なものだと言えます。これが定まっていなければ店舗づくりの方針がぶれてしまい、開業後の業績に対して正しい可否判断ができません。ただただ売上がいいか悪いかに一喜一憂するだけの、軸のない経営になってしまいます。その意味でも店舗コンセプトは、何よりも最初にきちんと考えて確立すべきものなのです。
では、店舗コンセプトとはどのようなものなのでしょうか。例えば「明るくおしゃれなカフェ」とか「安くておいしいビストロ」といった店舗を想定したとします。しかし、これだけでは店舗コンセプトとしては成立しません。なぜなら、具体性に欠けるからです。「明るくおしゃれ」「安くておいしい」は、確かにその方がいいですし、お店の魅力の一つにはなります。ただ、お店のデザインをどうしたいとか、メインメニューとして何を提供したいのか、どういうお客様にどんなふうに利用してもらいたいのか、などといった具体的な店舗像がイメージできません。
言い換えれば、「目指すものが見えてこない」ということにほかなりません。顧客からすると「味は悪くないけど二回目は来ないかな」とか「何がウリなんだろう?」、「もっと何とかできそう」などという、決め手に欠くような評価に落ち着いてしまう危険性があります。
これは「事業計画」にも大きく影響します。事業計画は店舗コンセプトを基に作り上げていきますから、その基が曖昧だと、当然そこから組み立てる事業計画もゆるく隙だらけのものになってしまいます。ですから、店舗コンセプトはより具体的に「誰に(Who)」「何を(What)」「どこで(Where)」「いくらで(How Much)」「何のために(Why)」などを明確に想定して形づくるといいでしょう(これは立案の助けとなる「7W2H」という考え方の一部です)。
【事業計画の立案について】
店舗コンセプトがしっかりと確立できたら、次は「事業計画」を立案します。事業計画は、店舗コンセプトで掲げたやりたいことを実際に事業として成立させるために、細部にわたり説明したものです。最終的に「事業計画書」としてまとめ上げます。
事業計画書は、金融機関から事業資金を融資してもらうときに必ず提出する重要な書類です。融資する側は事業計画書を見て、その店舗(事業)が市場で成立するか、継続的に安定した経営が見込めるか、将来的に業績が上がる見通しがあるかを検討します。その結果、融資可否の判断をし、融資額の上限を決めるのです。
金融機関は、優良だと判断した事業案件には積極的に資金を貸してサポートしてくれますが、逆の場合は厳しい判定を下します。これは当然のことですから、融資を受ける側は、貸す側が前向きになれるような計画を提示する必要があるのです。
事業計画の内容は、大きく分けると「事業の目的」「経営計画」「収支計画」の三つの項目で構成されます。この項目をさらに細分化して、具体的なサービス内容、必要な場所・設備、初期費用、販売物品(原材料)の仕入れ方法と費用見込み、想定生産量、ターゲット顧客層、収支予測、損益分岐点の想定といった具体的な項目を細かく検討・確定していきます。
事業計画は、何も融資を得るためだけに頑張って作るものではありません。立ち上げた事業がうまく進んでいくように、必要な都度確認していくものでもあります。業績が低迷したときには、どこかを変えたり削ったりしなければならないかもしれません。あるいは好調が続けば事業拡大を検討することもあるでしょう。それらのときに、きちんと創業時の計画を基に考えられるというのは、とても大切なことです。そのために、夢を持ちながらも冷静に堅実な事業計画を作成しましょう。
出店場所・物件の選定~資金調達準備
【出店場所・物件の選定について】
事業計画書の作成がある程度進んだら、実際に出店する場所を考え、店舗物件を探し始めます。提供しようとする製品・サービスに雰囲気がマッチしているのか、想定する顧客層の来店が見込めるのか、競合店の存在はあるのか、予算と賃料相場のバランスは取れるかなど、さまざまな視点で検討する必要があります。
すでにコンセプトは確立されているので、店舗のイメージは描けているはずです。あとは事業計画で策定済みの資金計画に基づいて、現実的な予算配分でどの候補地が最も適しているかを絞り込んでいくことになります。とはいえ、希望条件をすべて満たした物件はなかなか見つからないものです。大抵は妥協する部分が出てきます。そのときに、規模を縮小するのか、サービス内容を見直すのか、不便さを我慢するのかなど、判断が必要になるでしょう。
いずれにしても、一度出店すればそう簡単には移転するわけにはいきませんから、事業継続と将来性もよく考えて店舗選定を行いましょう。
【資金調達について】
事業計画書が出来上がったら、実際に資金調達に動きます。借りる店舗候補が絞れて、具体的な契約の話が進んでいるのに、お金の準備が未確定では何も始められません。ですから、金融機関への融資相談はタイミングをきちんと計ってするべきです。
大抵の場合は、事業計画書を持って担当者と面談を行います。計画に不明点や資料の不足などがあれば、修正の上再度提示することになります。必要な書類が整ったら審査へと進みます。そこで融資の可否判定もしくは融資金額が確定することになります。
融資を受ける際には、開業資金として必要な金額と当面の運転資金として必要な分をきちんと分けて考えておく必要があります。この点は、事業計画が綿密に策定されていれば問題はありませんが、開業後に売上が軌道に乗る前に資金がショートしてしまうということはあり得る話ですので、先々のことも含めた資金調達を考えましょう。
店舗設計・施工~開店準備
【店舗設計・施工について】
晴れて店舗が確定できたら、いよいよ自分の店を作り上げることになります。苦心して練り上げた店舗コンセプトや事業計画をもとに、デザイナーや内装施工会社と綿密な相談・打合せを繰り返しながら形にしていきます。
借りた店舗の状態が、「居抜き」か「スケルトン」かで大きく違いますが、基本的に内装工事・設備機器の導入には、かなりの金額が必要になります。施工してからイメージが違うとか、発注と施工内容が合っていないということがあっては、やり直しに無駄な費用がかかる上に工期も間に合わず、開店が延期されるおそれが出てきます。
そうならないためには、複数の会社に相見積もりを取り、きちんと比較検討した上で、信頼できると判断した会社に依頼することが必要です。相見積もりを取るときは、各社に対し条件を同じにすることが大事です。そのためには、施工内容をできるだけ具体的に項目立てて、できるだけ曖昧な部分がないように心がけましょう。
最終的には、デザイン・施工の実現性と費用・スケジュールとの折り合いの付け方をどうするかということになりますが、その点は勘所を抑えているプロの会社にうまく相談してみるといいと思います。また、店舗の内装には法令による制限がかけられており(内装制限)、業種や店舗規模などで規制内容が異なります。この制限が守られていないと営業はできませんから、自分で規制内容を理解するとともに、施工会社にも確認して不備がないように気をつけましょう。
【開店準備について】
店舗そのものの施工を進める一方、並行して開店準備も進めなければなりません。飲食店の場合は、店舗コンセプトに沿ったメニューを考案し、仕入れルートを確立する必要があります。調理器具や食器、客席の家具・什器・装飾品の購入も必要です。
従業員を雇う場合は、その手配もしておきます。従業員が仕事を覚えるための研修はどうするか、内容と期間の検討が必要です。一人でも人を雇えば、事業主にはその人に対する責任が発生します。賃金の支払いについてはもちろんのこと、社会保険への加入など福利厚生面でもやらなければいけないことは出てきます。労働基準法に対する理解を深めておくことは、必須でしょう。
また、忘れていけないのが、店舗開業にあたり必要な資格の取得や届け出、許可申請です。業種や取り扱う物品、営業時間により必要な事柄が異なりますから、自分の事業内容で該当するものを正しく把握しましょう。一つでも失念すると営業ができません。取得や申請にかかる期間に注意を払いながら、確実に手続きをしておきましょう。
開店に向けた店舗と提供サービスの準備が整ってきたら、開店告知のことも考えましょう。事前に新規開店を告知しておき、幸先の良いスタートダッシュを切りたいものです。今や宣伝・情報発信・集客・コミュニティーの創出において、手軽で効果的なのはインターネットの利用であることは周知の事実です。営業を開始してからホームページやSNSを立ち上げようとすると、日々の仕事に追われてなかなか手がつかなくなるものです。できるだけ開店前の準備期間に時間をつくり、自前のメディアを立ち上げておきましょう。そうすれば事前告知もでき、早めのファン獲得も期待できます。
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